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元旦の北日本新聞の社説です。   

2011年スタート 心機一転の年/志高く明るい未来描こう
2011年01月01日 01:00【北日本新聞】
 「世は海である。身は舟である。志はかじである」。江戸前期の儒学者で本草学者の貝原益軒は『大和俗訓』の中でそう述べている。

 高く正しく志を掲げないと思いの地にはたどり着けず、ひとたび嵐に遭えばあえなく沈む。そうであるからこそ「志の持ちようが大事である。悪い志を持つと身をくつがえす」と諭している。

 この碩学(せきがく)は平易な言葉で生きるための指針を教えてくれる。今も親しまれるゆえんだ。新年の初めに一人一人が凛(りん)として志を立て、雄々しくこぎ出していきたい。

 強い意志は為政者にこそ欠かせないはずだ。人々が平安に、心豊かに暮らすためのビジョンを描き、それを実現するための信念や覚悟がなければならない。

 だが昨年、その覚悟のほどをどこかに置き忘れたのではないかと思うようなことが多かった。中国漁船衝突事件や北方領土問題などでうろたえ、毅然(きぜん)とした態度を示せなかった。北朝鮮による韓国への砲撃にも、平和を希求する日本の姿勢を即座に表せなかった。為政者自らが閉塞感を醸し出したのだから困る。

 だからといって内向きになってはならない。日本人が持つ底力。それをもっと信頼していい。日本人の創造性にもっと自信を持っていい。そう確信させたのが、鈴木章北海道大名誉教授と根岸英一米パデュー大特別教授のノーベル化学賞受賞だった。

 有機分子の炭素原子を結合させる画期的な発見を成し遂げ、世界の称賛を受けた。日本人の受賞者はこれまでに18人を数える。物理学賞の湯川秀樹氏にはじまり、文学賞の川端康成氏、そして化学賞には富山市出身の田中耕一氏もいる。困難に立ち向かい、人類の発展に貢献する姿に感銘を受けた人は多かろう。素晴らしい科学や文学を生み出す豊かで文化的な土壌が、この国の人々にはしっかりとある。それを誇りに思いたい。

 小惑星イトカワから貴重な微粒子を持ち帰った探査機「はやぶさ」の快挙もそうだ。8年前に打ち上げられ、数多くのトラブルに見舞われて、一時は絶望視されながら地球に帰還した。月よりも遠い天体から物質を持ち帰ったのは歴史上初のことである。

 幸運だけではない。何よりも日本の高度な宇宙技術があり、たゆまぬ努力と情熱があればこそだ。後継機「はやぶさ2」の使命は「生命の起源と進化に迫る」である。日本のパワーを再認識し、未知なるものに挑む精神は頼もしい。

 いたずらに軍事力を誇示することで「国の力」とするような昨今の風潮は受け入れがたい。国際社会にとって「異質」の存在だろう。世界の人々から頼られる凛とした国でありたい。

 確かに内外ともに課題山積である。だからこそひるまずに平和な未来を切り開いていく気概を持ち続けよう。とりわけ次代を担う若い世代は広い視野を養い、目標を高く掲げてほしい。

 そんな若者を輩出したいと北日本新聞社は昨年、「平成広徳塾」をスタートさせた。外交、経済、金融、文化など各分野の第一線で活躍する講師が講義し、1期生40人が研さんを積んできた。先達の苦労やそれを克服した体験談から得るものは大きいはずだ。4月からは2期生を募集する。

 社会に新しい風を送り込むのは若者たちだ。時代の荒波を果敢に越えていくために、大人は自らの経験を語り、彼らの中に豊かで強じんな精神を培いたい。この国が営々と築き上げてきた文化に誇りを持ち、郷土富山を愛する心を育みたい。未来に羽ばたく彼らの大きな支え、糧となるはずだ。

 益軒はこうも言う。「常の時に変にあった時の覚悟がないと、不意の変にあってつまずく。明日のことは今日から心を用いる。来年のことは今年から心を用いる」と。志高く明るい未来を描こう。


【北日本新聞は一年前から有料のWeb版を始めています。これからの新聞報道の一つの在り方ではないのかと考え購読をしています。確かに、地域の情報は充実しており、故郷を出て県外や海外で活躍されている人達が多数購読しているようです。長崎新聞も頑張ってほしいと思っています。
ところで元旦の社説はネットにアクセスするようになってから毎年取り込んでおり、これが元旦の恒例行事になっています。私が読んだ中で若い人たちに焦点を当てているのは、北日本の社説ではないのかと考え今日のブログに載せています。多くの社説は政治経済を中心にした内容が多く、どれも考えさせられるものになっています。特にその中でも、地方議会のことについて述べてある社説には身も心も引き締まる思いです。今年は地方議会の中身について多くの情報が発信されるものと思っています。有権者の皆さんに最も身近な地方議員は何しているのか関心持って情報に接して欲しいと思っています。】

by magome2007 | 2011-01-02 08:17 | Trackback | Comments(0)

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